消化器
スイカによる食道閉塞の1例
こんにちは。今回は夏場におきたスイカの食道閉塞についてご紹介いたします。
仮名:ポンちゃん
年齢:1歳
犬種:ポメラニアン(♀)
体重:2.5kg
症状
スイカを食べてから呼吸が荒く、ウーウーと鳴きながら落ち着かないとのことで来院されました。
一般身体検査では心音に異常はありませんでしたが、涎(ヨダレ)が多く、呼吸数も上昇していました。追加検査として、胸のレントゲン検査を行いました。
診察内容
左はポンちゃんの胸部レントゲン側面像です。矢印のように胸腔内に白い影(心基底部〜肺後葉にかけての不透過性亢進像)を認めました。右の写真は正常なワンちゃんの胸部レントゲン像です。
飼い主様の稟告や症状から食道閉塞が疑われたため、次にバリウム造影検査を実施しました。
通常、バリウムは食道に停滞することなく速やかに胃内に流入します。ポンちゃんの場合、明らかに食道内にバリウムが停滞しており、とくに点線で囲んでいる領域周辺でバリウムが停滞していることがわかります。
治療内容
点線領域がスイカであることを疑い、内視鏡検査を実施しました。
食道内の内視鏡写真です。矢印はスイカの破片を示します。右上の写真が食道内の閉塞を引き起こしたスイカです。スイカを内視鏡にて胃内に押し込み、食道閉塞を解除しました(左下写真)。
治療結果
食道閉塞解除の処置後のポンちゃんは涎や呼吸状態も改善し、元気に退院しました。
ポンちゃんは普段から食欲旺盛で、ご飯を急いで食べる癖があり、今回のスイカもあまり咀嚼せずに丸呑みしてしまったものと思われます。このように食べ物を噛まずに丸呑みして、食道内や咽頭部に閉塞を引き起こすことが稀にあります。とりわけ多いのがジャーキー(大きいサイズのもの)です。食道内閉塞は涎や、落ち着きがなくなる、吐き気、呼吸が早くなるという症状が一般的です。咽頭閉塞の場合は、閉塞の状態によっては呼吸困難に陥るため緊急性が高い疾患です。
まとめ
今回は、麻酔下での内視鏡検査にて食道閉塞の診断と解除を行いました。内視鏡検査は、お腹や胸を開く必要がないため、ワンちゃんやネコちゃんへの負担が非常に少ない検査です。また、食道だけではなく胃や十二指腸、大腸の検査を行うことが可能です。当院では内視鏡を用いた低侵襲な検査や処置を積極的に行なっております。
獣医師からのメッセージ
このような食べ物による閉塞は、ワンちゃんに与える食べ物を細かくしてから与えるだけで防ぐことができます。皆さんもおやつなどあげる際は注意してあげてください(^^)
獣医師:保田