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ORTHOPEDICS 整形外科(関節・神経疾患)

関節疾患について

犬や猫の関節疾患には、脱臼や靭帯・腱の損傷または炎症など、様々な疾患があります。犬や猫にとって『足が痛い』、『足を浮かせる』、『足を引きずる』、『走ることができない』という症状は、人と同じように生活の質(QOL)が低下してしまいます。当院では関節疾患に対する積極的な検査や治療を行なっており、犬猫のQOL改善に勤めております。
関節を形成している骨の表面は軟骨で覆われています。軟骨は関節の滑らかな動きを可能にし、同時にクッションの機能を有しています。関節疾患によって関節に異常な動揺や炎症が生じると、持続的な軟骨の損傷が発生し、痛みを伴う関節炎(変形性関節症:DJD)へと進行します。損傷を受けた軟骨は基本的に元に戻ることはないため、早期診断・早期治療が重要となります。
また、犬では成長期に起こる関節疾患が多いので、比較的若いうちに検査を受けることも大事です。
※担当の獣医師が診察いたしますので、整形外科の専門診療をご希望される場合は事前にお問い合わせください。
以下に代表的な関節疾患を説明します。

01. 肩関節疾患

肩関節の不安定症、肩関節脱臼

肩関節は肩甲骨と上腕骨によって形成されており、比較的広い可動域を持つ関節です。肩関節の安定化には、肩関節周囲の筋肉や靭帯が重要な役割をしています。肩関節の不安定症や脱臼は筋肉の萎縮や靭帯の損傷に起因し、多くの場合、内方脱臼がみられます。小型犬に多く発生し、外科手術や装具の着用が必要になります。
原因

トイプードルなどのトイ犬種は加齢性に靭帯が弱くなることで不安定性が生じやすく、時に内方や外方への脱臼が生じます。また、外傷性に靭帯損傷が生じることで脱臼を引き起こすこともあります。稀に先天性の脱臼が見られこともあります。

治療法
  • アンカー法(人工靭帯法)
  • 肩関節固定術
  • 保存療法(装具)

離断性骨軟骨症(OCD)

上腕骨頭の関節軟骨が剥がれ落ち、関節内に遊離することで軽度〜中程度の前肢跛行が見られます。ときに両側性に発生します。5〜10ヶ月齢(成長期)の大型犬に好発する疾患ですが、成犬になってから症状を発症することもあります。遊離軟骨を除去する外科手術が必要となります。
原因

遺伝性やホルモン性の原因によって関節軟骨への血液供給が阻害されることで、軟骨の骨化異常をきたし、軟骨の肥厚、亀裂、脱落を引き起こすと考えられています。

治療法
  • 遊離軟骨の摘出術
    (関節切開術または関節鏡下摘出術)

二頭筋腱鞘滑膜炎

中〜大型犬に発生しやすく、軽度〜中程度の前肢跛行を呈します。二頭筋の活動時に疼痛が発生しやすく、慢性進行性に変形性関節症を引き起こします。診断にはレントゲン検査や関節鏡検査を組み合わせて行う必要があります。治療は重症度によって異なり、PRP(多血小板血漿)療法や外科手術が適応されます。PRP療法はヒトにおいて、スポーツ選手などに多く実施されている再生医療になります。血小板には多くの組織修復因子が含まれます。PRP療法は、患者自身から採取した濃縮血小板を患部に直接注入することで自己再生能力を高める治療になります。

原因

上腕二頭筋の酷使や外傷、OCDに起因する腱障害によって起こります。

治療法
  • 二頭筋腱切離術
  • PRP療法

02. 肘関節疾患

肘関節形成不全(Canine Elbow Dysplasia:CED)

大型犬を中心とした発育期の多因子遺伝性疾患で、病態によって様々な疾患名に分類されます。いずれの疾患も病態進行とともに二次性の変形性関節症(DJD)に進行します。
症状

ⅰ内側鈎状突起離断(FMCP)

尺骨の内側鈎状突起が分離または離断することで生じる前肢跛行です。症状は様々で無症状〜中程度の跛行までみられます。はっきりとした原因は解明されていませんが、骨軟骨症や橈骨・尺骨の成長不均衡などが大きな要因と考えられています。そのため、両側性に発生することが多いです。

ⅱ肘突起癒合不全(UAP)

5~6ヶ月齢を過ぎても肘突起と尺骨近位骨幹の癒合が完了しておらず、肘突起に負担がかかることで疼痛が発生する病態です。軟骨の骨化不全、橈骨・尺骨の成長不均衡などが要因と考えられています。

ⅲ離断性骨軟骨症(OCD)

成長期において上腕骨内側顆の軟骨が分離し、関節内に遊離することで疼痛を発生する病態です。軟骨の骨化異常(骨軟骨症)などが原因と考えられています。

ⅳ肘関節不整合(joint incongruity)

肘関節は上腕骨・橈骨・尺骨の3つの骨が関節することで成り立っています。肘関節不整合は橈骨・尺骨の成長不均衡により、関節内に異常なギャップが生じる病態です。

診断・治療

触診やレントゲン検査にて診断を行います。また、レントゲン検査での診断が困難な場合は、関節鏡検査やCT検査が必要になることがあります。
治療法については、病態の種類や進行程度によって異なります。手術が必要な場合は、関節内遊離軟骨の除去や尺骨骨切り、PAUL(Proximal Abducting Ulna Osteotomy)、PRP(多血小板血漿)療法などがあります。

肘関節脱臼

落下や交通事故など外傷によって肘関節の靭帯が損傷することで発生しやすいです。とくに猫でみられることが多い疾患です。脱臼の整復には外科治療が必要となることが多いです。また、稀に先天性や発育期性に脱臼が生じることもあります。
治療法
  • 肘関節整復術(靭帯再建術)

03. 手根関節疾患

脱臼・亜脱臼

落下などの外傷に伴い、手根関節の靭帯が損傷することで発生します。また、関節炎の進行によって靭帯が破壊されることで生じることもあります。
症状の程度によって装具などの保存療法やPRP(多血小板血漿)療法、外科治療が選択されます。
治療法
  • 手根関節固定術
  • PRP療法
  • 保存療法(装具など)

免疫介在性の関節炎

手根関節のほか、膝関節や足根関節などにも生じる疾患で、手根の腫れや疼痛による跛行、ときに発熱や元気食欲の低下を引き起こします。とくに犬では自己免疫の異常による免疫介在性多発性関節炎が起こりやすいです。原因は解明されておらず、環境要因や遺伝性要因など多因子性と考えられています。診断には関節液検査や血液検査などが必要です。
治療には抗炎症薬や免疫抑制剤、抗生剤などによる内科治療が必要です。
原因
  • 免疫介在性多発性関節炎
  • リウマチ性関節炎
  • 感染性関節炎
治療法
  • 内科治療

04. 股関節疾患

股関節形成不全

成長過程で股関節(寛骨と大腿骨)の発育異常が生じ、股関節に緩みが引き起こされる疾患です。ラブラドールレトリバー・ゴールデンレトリバー・バーニーズマウンテンドッグ・ジャーマンシェパード・ニューファンドランドなどの大型〜超大型犬に多く発生がみられます。多くは4ヶ月〜1歳齢頃に股関節形成不全による症状を呈します。また、日本ではポメラニアンやフレンチブルドッグ、柴犬などの小型〜中型犬にも多く発生がみられます。
  • 散歩や運動することを嫌がるようになる。
  • 腰を左右に大きく振りながら歩く。(モンローウォーク)
  • 段差を嫌がる。
  • 横座りをする。
  • 立ち上がるのに時間がかかる。
  • ウサギのように両後肢を一緒に動かして走る。
原因

股関節の緩みが根本的な原因です。遺伝的要因と環境的要因の2つが組み合わさって、股関節の発育に異常が生じます。特に環境的要因として挙げられることが多いのは、激しい運動、餌のやりすぎによる肥満、カルシウムの過剰摂取などです。
大型犬や超大型犬に多い理由としては、成長期の骨格が形成されるスピードに筋肉の成長が追いつかないためだと言われています。

治療法
  • 若齢期恥骨結合固定術JPS
    (Juvenile Pubic Symphysiodesis )
  • 2点骨盤骨切り術
    (DPO:Double Pelvic Osteotomy)
  • THR(Total Hip Replacement)
    全股関節置換術
  • FHO(Femoral Head Osteotomy)
    骨頭切除術

レッグペルテス(無菌性大腿骨頭壊死症)

犬の股関節を形成している大腿骨頭が壊死を起こし、関節炎や骨折を起こす病気です。発見者の名前からレッグ(カルベ)ベルテス病と呼ばれることも多いです。成長期の小型犬で発症が多く、ほとんどの場合で手術が必要になります。代表的な犬種にトイプードル、ミニチュアピンシャーなどがあります。
原因

大腿骨頭への血液供給が何らかの原因で不足することで発生すると考えられています。また、遺伝的素因も影響していると考えられています。

治療法
  • FHO(Femoral Head Osteotomy)
    骨頭切除術

股関節脱臼

大腿骨頭をうける側の寛骨臼と大腿骨頭の間にある円靭帯が断裂し、股関節の関節包が破れることで、大腿骨が寛骨臼から逸脱します。急性に股関節脱臼を起こした場合は、強い痛みと患肢の挙上(ケンケンする)を認めることが多いです。慢性に脱臼が生じた場合は、強い痛みはなく、活動性の低下が認められることがありますが、ときに無症状のこともあります。脱臼の原因によって治療法が異なります。
  • キャンと鳴いて足が地面につかなくなる。
  • 歩き始めると患肢をケンケンする。
  • 散歩や運動することを嫌がるようになる。
  • 立ち上がるのに時間がかかる。
原因

股関節形成不全による慢性的な脱臼と、交通事故や高い所から飛び降りることが原因となる外傷性脱臼があります。

治療法
  • THR(Total Hip Replacement)
    全股関節置換術
  • ノーレス法(人工靭帯による再建術)
  • FHO(Femoral Head Osteotomy)
    骨頭切除術

05. 膝関節疾患

膝蓋骨脱臼

大腿骨遠位にある滑車溝から膝蓋骨(通称:パテラ、膝のお皿)が脱臼することで、「脚を曲げたままヨチヨチ歩く」「スキップをするように歩き始める」「後肢が伸びた状態になっている」などの症状が見られます。また、グレードの進行具合によって、無症状〜完全挙上(足が地面につかない)など多様な症状がみられます。
トイプードル、ポメラニアンなどの小型犬に多いのが内方脱臼です。外方脱臼はラブラドール・レトリバーなどの大型犬で多くみられます。多くが、発育期に発症が認められますが、成犬になってから発症することもあります。
グレード1 指で押すと脱臼するが、指を離すと元に戻る。
普段の生活の中で自然に脱臼することはない。
グレード2 指で押すと容易に脱臼するが指を離しても自然には元に戻らない。
普段の生活の中で自然に脱臼することがあり、元に戻ると跛行がおさまる。
グレード3 普段から脱臼したままで、指で押すと正常な位置に戻せるが、指を離すと脱臼した位置に戻る。
グレード4 普段から脱臼したままで、指で操作しても正常な位置に戻せない。
原因

原因には諸説あり、靭帯の異常や成長期における股関節の角度異常、骨と筋肉の成長の不均衡などがあります。また、事故などによる外傷によっても発症することがあります。

治療法
  • 滑車形成術(ブロックリセッション)
  • 脛骨粗面転移術(TTT)
  • 大腿骨・脛骨矯正骨切り術
  • 軟部組織の再建術

前十字靭帯断裂

あらゆる年齢で発生する犬の膝関節に多く認められる疾患です。
大型犬では、レトリバー・バーニーズ・ロットワイラー・ニューファンドランド、中型犬ではコーギー・ビーグル・柴・ボーダーコリー、小型犬ではチワワ・ヨークシャテリア・ジャックラッセルテリア等で好発します。後肢の跛行や挙上がみられます。
膝関節の安定化を担っている前十字靱帯が断裂することにより、膝関節の不安定性が発現します。断裂した前十字靱帯の断端から炎症性のメディエーターが放出されるため、膝関節の滑膜炎(関節炎)が起こります。

また、膝関節不安定性により二次的に半月板損傷が引き起こされます。これらが前十字靱帯断裂に伴う痛みの原因になっています。
物理的な不安定性から生じている問題ですので、特に大型犬・中型犬では内科的管理は効果的ではありません。
外科的に膝関節を安定化させる必要があります。長期的にみても外科的安定化を行なうことで、関節炎の進行も最低限に抑えられると考えられています。また、病態が進行する前の部分断裂の時点で診断し、早期に治療することが、より早い機能回復および良い予後につながります。関節鏡検査は部分断裂の早期発見に有効な検査です。また、脛骨高平部水平化骨切り術(Tibial Plateau Leveling Osteotomy:TPLO)は膝関節の安定化に有効な治療であることが証明されています。

原因

前十字靭帯断裂が外傷性による生じるケースは稀で、ほとんどが非外傷性です。様々な原因が疑われており、脛骨高平部の角度異常や前十字靭帯の変性(加齢性変化)、膝蓋骨内方脱臼との関連、肥満、ホルモン性疾患、ステロイドの投与など多岐にわたります。

治療法
  • 脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)
  • 関節外制動法
    Lateral Suture Stabilization

06. 足根関節疾患

脱臼・亜脱臼・不安定症

足根関節には多くの靭帯が存在し、それらの靭帯の損傷によって、脱臼や亜脱臼、不安定症が生じます。落下などの外傷に伴い発生することが一般的ですが、関節炎の進行によって靭帯が破壊されることでも生じることがあります。
症状の程度によって装具などの保存療法やPRP(多血小板血漿)療法、外科治療が選択されます。
治療法
  • 足根関節固定術
  • 保存療法
  • PRP療法

浅趾屈筋腱の脱臼

外傷性によって生じることがあり、踵(かかと)が腫れや軽度〜中程度の跛行が見られます。症状によって保存療法または外科治療が必要になります。
治療法
  • 脱臼整復術
  • 保存療法

アキレス腱(総踵骨腱)断裂

外傷性によって生じることがあり、断裂によって足根関節の伸展機能が失われます。通常、犬や猫は足先を地面について歩きますが、アキレス腱断裂では蹠行性跛行(かかとを地面について歩く)を呈します。
外科治療が必要となります。

治療法
  • アキレス腱整復術
  • 足根関節固定術

神経疾患について

犬猫が足を上げたり、引きずったり、ふらついたりする原因には骨や関節疾患の他に、神経疾患が原因となっていることがあります。代表的な病気としては、椎間板ヘルニアや神経根症、環軸椎不安定症、頸部脊椎不安定症(ウォブラー症候群)、馬尾症候群(変性性腰仙椎狭窄症)などがあげられます。
当院では、歩行検査、神経学的検査、血液検査、レントゲン検査によって、これらの疾患の鑑別を行なっております。(*確定診断のためには麻酔下での脊髄造影レントゲン検査が必要になることがあります)
また、診断が難しい場合にはCTやMRIによる高度な画像検査が必要になることもございます。その際は専門病院にご紹介させていただきます。
以下に代表的な神経疾患である椎間板ヘルニアについてご紹介します。

椎間板ヘルニア

加齢性・外傷性・遺伝性などが原因で変性した椎間板が逸脱し、脊椎内を走行する太い神経(脊髄)を圧迫することで起こる病気です。 頚部・胸部・腰部のどこにでも発症する可能性があり、圧迫の程度によって、痛みや麻痺といった神経症状が生じます。代表的な症状は以下の通りです。
  • 歩きたがらない
  • 足が動かない、引きずってしまう
  • 背中を触ると痛がる、抱っこする際に痛がる
  • 腰が立たない、ふらつく
  • 段差やソファーを嫌う
  • うまくおしっこが出ない、または失敗する
検査

確定診断として麻酔下での脊髄造影レントゲン検査が必要となります。また、診断が難しい場合はCTやMRIなどの高度な画像検査が必要になることがあります。

治療法

治療としては様々な術式の外科治療やリハビリテーションを取り入れた保存療法などがあります。

よくある質問

Q

他院で膝蓋骨脱臼があると言われましたが、手術は必要ですか?

A

基本的に膝蓋骨脱臼の治療は手術以外にありません。しかし、全ての膝蓋骨脱臼が手術適応というわけでもありません。その子の年齢や脱臼の種類(内方または外方)、グレード、症状といった様々な要素を考慮して手術が必要かどうか判断します。ワンちゃんの膝に不安を感じておられる方や、症状が認められるという方は当院を受診していただくことをお勧めします。

Q

膝蓋骨脱臼の手術で足が使えるようになりますか?

A

一般的にグレード3までの膝蓋骨内方脱臼を早期に手術した場合は、合併症がまれで十分な機能回復が望めます。しかし、グレード4の場合や、膝蓋骨外方脱臼の場合は比較的に合併症率が高く、手術難易度も高い(変形矯正骨切りなどの特殊技術が必要になる可能性があります)ため、ある程度の症状が残ってしまう可能性があります。術後にどのくらい機能回復が望めるかは、グレード評価や関節の機能評価が必要になりますので一度受診していただくことをお勧めします。

Q

普段は症状がありませんが、たまに足をかばう様子があります。受診したほうが良いですか?

A

はい。足に十分な体重がかけられないことがある場合は、痛みや違和感のサインである可能性があります。ワンちゃん、ネコちゃんは話すことができないため、強い痛みでない限り、はっきりとした症状が出ないことが多いです。関節疾患においても早期発見と早期治療はとても大切なことであるため、当院を受診していただくことをお勧めします。

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