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CASE 症例紹介

犬の椎間板ヘルニア

こんにちは。今回は犬の椎間板ヘルニアについてご紹介したいと思います。

*術中の写真がありますので、苦手な方はご注意ください。

『椎間板ヘルニア』とは加齢性・外傷性・遺伝性などが原因で変性した椎間板が逸脱し、脊椎内を走行する太い神経(脊髄)を圧迫することで起こる病気です。 頚部・胸部・腰部のどこにでも発症する可能性があり、圧迫の程度によって、痛みや麻痺といった神経症状が生じます。代表的な症状は以下の通りです。

  • 歩きたがらない
  • 足が動かない、引きずってしまう
  • 背中を触ると痛がる、抱っこする際に痛がる
  • 腰が立たない、ふらつく、滑る
  • 段差やソファーを嫌う
  • うまくおしっこが出ない、または失敗する

椎間板ヘルニアの検査・診断

まず、神経学的検査によって椎間板ヘルニアのグレードを分類します。また、本疾患と類似した症状を示す、他の疾患を除外するために血液検査やレントゲン検査が必要になります。そして、本疾患を疑う場合は確定診断としてCT検査やMRI検査が必要になります(全身麻酔)。

椎間板ヘルニアの治療

椎間板ヘルニアの治療は内科療法外科療法に分けられます。軽症例では内科療法、再発が多い場合や重症例では外科療法が選択されるケースが一般的です。

  • 内科療法では消炎剤の投与やケージレスト(絶対安静)を行います。また、疼痛緩和としてレーザー療法を併用することもあります。また、症状に応じてコルセットを着用することもあります。
  • 外科療法では手術を行い原因となっている椎間板物質の除去や減圧を行います。ヘルニアの発生部位や発生状況に応じた様々な術式が存在します。また、術後は神経機能の回復のためのリハビリテーションが重要になります。

 


実際の症例1

犬種:ミニチュアダックスフンド(♂)

年齢:5歳齢

体重:6.4kg

名前:リムちゃん(仮名)

主訴:昨晩抱っこした際にキャンと鳴き、その後から右後肢が動かなくなった。朝になり左後肢も動かなくなり、立てなくなった。

神経学的検査やレントゲン検査、血液検査の結果から腰部椎間板ヘルニアグレード3を疑い、全身麻酔下でCT検査を実施しました。

CT検査の結果、第11胸椎〜第12胸椎間の右尾腹側に石灰化した椎間板物質(黄色矢印)の逸脱を確認しました。

本例ではヘルニア発生部位から小範囲片側椎弓切除術(mini-hemilaminectomy)を実施しました。第11~12胸椎の右側を専用のドリルを用いて4mm×8mm大の骨孔を作成し(黄色矢印)、多量の椎間板物質(右写真)を摘出しました。

術後の経過は良好で、術後1週間でふらつきながらも自力歩行が可能になりました。術後1ヶ月間は厳重に安静にしていただき、同時に自宅でのリハビリを実施していただきました。術後2ヶ月では以前と変わらずお散歩ができるまで回復しました。

腰部の椎間板ヘルニアは再発することがあるため、術後も体重管理や一部の運動の制限(段差禁止)が必要になります。


実際の症例2

犬種:ミニチュアダックスフンド(♂)

年齢:12歳齢

体重:6.0kg

名前:ドラちゃん(仮名)

主訴:階段からの落下し、その後から左半身を主とする麻痺、起立困難。

神経学的検査やレントゲン検査、血液検査の結果から頚部椎間板ヘルニアグレード3を疑い、全身麻酔下でCT検査を実施しました。

CT検査の結果、第2頸椎〜第3頸椎の左尾腹側に石灰化した椎間板物質(黄色矢印)を認めました。

頚部腹側減圧術(Ventral Slot)を実施し、第2-3頸椎腹側を専用のドリルを用いて3mm×6mm大の骨孔を作成し、脊髄を圧迫していた椎間板物質を摘出しました(右写真)。

術後経過は良好で、術後3日で自立できるようになり、術後2週間でふらつきながらも歩行できるようになりました。術後1ヶ月間は厳重に安静にしていただき、週に2回通院にてリハビリを実施しました。術後6週間では以前の通り歩けるようになりました。

頚部の椎間板ヘルニアも、腰部と同様に再発することがあります。再発防止のために、術後は首輪ではなく、胴輪(ハーネス)での散歩が推奨されます。また、頸椎に不安定症が認められる場合は頸椎コルセットの着用が必要になることもあります。

まとめ

椎間板ヘルニアはミニチュア・ダックスフンドやビーグルなどの軟骨異栄養症犬種で発症の多い脊髄の病気です。加齢とともに発症率が上げり、発症すると首や腰の痛み、四肢の麻痺などの原因となるため注意が必要です。重症化すると手術が必要になる場合もあります。日頃から腰や首に負担がかからない生活と適切な体重管理を心がけましょう。

獣医師からのメッセージ

椎間板ヘルニアは命に直接関わることは多くはない疾患ですが、生活の質(QOL)を非常に低下させる疾患です。当院では内科療法をはじめ、外科療法、リハビリまで幅広く椎間板ヘルニアに対応しております。

獣医師:保田

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