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CASE 症例紹介

脛骨・腓骨の骨折

こんにちは。今回は骨折の中でも比較的診療することの多い脛骨・腓骨の骨折についてご紹介いたします。

*術中の写真がありますので、苦手な方はご注意ください。

脛骨・腓骨の骨折の特徴は?

脛骨は人でいうスネの骨であり、人と同様に犬猫でも簡単に触ることができます。腓骨は脛骨の外側にある細い骨で、犬猫ではあまり体重荷重に関与していません。

脛骨腓骨

脛骨・腓骨の骨折は犬猫においてよくみられる骨折で、落下・転倒・交通事故において発生しやすいです。また、開放骨折(骨折した骨が皮膚を貫通する骨折)や亀裂骨折、粉砕骨折など複雑なタイプの骨折が生じやすく、外科手術が必要になることが多いという特徴があります。

外科手術は、骨折のタイプや骨折部位、年齢など様々なことを考慮して術式を選定する必要があります。


実際の症例1

犬種:フレンチブルドッグ(♂)

年齢:4ヶ月齢

体重:5.4kg

名前:ブルちゃん(仮名)

主訴:抱っこから落ちて右後肢挙上

脛骨骨折

脛骨近位から骨幹部にかけて螺旋状の骨折を認めました。また、腓骨の骨折は認められませんでした。

脛骨骨折

脛骨の内側プレーティング法およびラグスクリュー法にて骨折部の整復を行い、術後6週目に良好な骨癒合を確認し、プレートを抜去しました。

ブルちゃんは術後2日目で患肢を着地できるようになり、術後1週目には問題なく歩けるようになりました。また、ブルちゃんは4ヶ月齢で成長期であるため、骨癒合後に脛骨内側に設置したプレートを抜去しました。チタン製のスクリューは抜去せず残していますが、問題になることはありません。その後も骨変形などの骨折後の後遺症は見られず、元気に生活しているとのことです。


実際の症例2

犬種:シェットランドシープドッグ(♂)

年齢:4歳齢

体重:11kg

名前:テツオちゃん(仮名)

主訴:車にはねられ右後肢骨折(紹介)

脛骨螺旋骨折

脛骨骨幹部に螺旋状の骨折を認めました。また、螺旋状の亀裂が足根関節にまで達し(黄色矢印)、複雑な骨折を呈していました。

脛骨プレートロッド法

骨折整復の固定強度を高めるために、脛骨内側プレートに髄内ピンを併用(プレートロッド法)して骨折部の整復を行いました。術後2ヶ月で髄内ピンを抜去し、術後3ヶ月で良好な骨癒合を確認しました。

テツオちゃんは術後1週間でしっかりと患肢を着地するようになり、その後も足の異常は認めませんでした。脛骨内側に設置したチタンプレートは抜去せず、そのまま残してあります。


実際の症例3

犬種:mix(♂)

年齢:6歳2ヶ月齢

体重:2.5kg

名前:フクちゃん(仮名)

主訴:落下して右後肢骨折

脛骨骨折

脛骨骨幹部に骨折を認めました。亀裂骨折は認めませんが、骨折部に微細な骨片を複数認める粉砕骨折となっておりました。

脛骨骨折 MIPO

フクちゃんの場合、骨折整復の固定強度を高めるために、プレートを2枚使用し(オルソゴナルプレーティング)、骨折部の整復を行いました。術後2ヶ月で良好な骨癒合を確認し、脛骨前面に設置したプレートを抜去しました。また、本術式は最小侵襲プレート固定法(minimally invasive plate osteosynthesis:MIPO)で実施しました。

MIPO

この術式の特徴は、骨折部を直接触ることなく骨折整復を行うことです。骨折部に外科侵襲を加えないことで、骨折部の血流などの生物学的治癒能力を維持することができ、術後の治癒能力を最大限に高めることができます。

フクちゃんは術後3日ほどで患肢を着地できるようになり、術後2ヶ月で前面プレートの抜去を実施しました。骨折部にわずかな歪みを認めますが、膝関節と足根関節のアライメントが保たれているため、跛行は認められず、その後も後遺症なく生活しています。


実際の症例4

猫種:日本猫(♀)

年齢:4歳齢

体重:6kg

名前:ミイちゃん(仮名)

主訴:2階のベランダから落下して左後肢骨折

猫の脛骨骨折

左脛骨骨幹遠位部に遊離骨片(黄色矢印)を伴う粉砕骨折を認めました。症例3のフクちゃん同様にMIPO法にてオルソゴナルプレーティングを実施しました。

猫の脛骨骨折

術後2ヶ月で良好な仮骨形成を認め、術後3ヶ月で前面プレートの抜去を実施しました。

ミイちゃんも術後早期に患肢を使用できるようになり、術後2ヶ月で安静を解除してもらいました。

成猫の脛骨骨幹遠位の粉砕骨折は『悪魔の骨折』とも言われることがあり、非常に治りにくい(癒合不全やインプラント破綻が起きやすい)骨折として知られます。今回、MIPO法で手術を行ったことで、迅速な骨癒合が達成されました。

まとめ

脛骨・腓骨の骨折は、時に複雑な骨折を引き起こします。そのため、適切な治療を行わない場合は癒合不全によって患肢が治らない事態に発展することがあります。特に、小型犬や高齢な犬猫の骨折、交通事故による強い外傷による骨折には注意が必要です。

獣医師からのメッセージ

骨折における治療の目的は、なるべく早くに安全に正常な運動が可能となるように治療することです。

当院では動物の年齢や種類、性格、骨折のタイプなど様々な要素を考慮して最善の治療を提供させていただきます。

獣医師:保田

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