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CASE 症例紹介

骨盤骨折

こんにちは。今回は骨盤骨折についてご紹介します。

骨盤とは?

骨盤は腸骨、恥骨、坐骨の3つの骨から形成されており、骨盤腔臓器(直腸、尿道、前立腺、子宮など)を保護する役割があります。また、骨盤には大腿骨と関節する股関節や、脊椎と関節する仙腸関節が存在し、体を支えるために重要な働きをしています。

骨盤骨折の原因は?

骨盤骨折は、高所からの落下や交通事故など強いエネルギー外傷によって引き起こされます。そのため、内臓損傷や脊髄損傷などを伴うケースも多く、骨折の評価だけではなく、全身状態の評価も重要になります。

骨盤骨折の治療は?

骨盤骨折の治療は、骨折している箇所や骨の変位(ズレ)の程度によって、手術の必要性や手術の術式が大きく異なります。そのため、レントゲン検査の評価が重要となります。粉砕骨折の場合はCT検査による、より詳細な骨折評価が必要となることもあります。

一般的に骨の変位が見られない骨折や、坐骨・恥骨のみの骨折では必ずしも手術は必須ではなく、2ヶ月ほどの安静管理で治癒することが多いです。

しかし、変位のある腸骨の骨折や股関節の形成部位である寛骨臼の骨折、仙腸関節の脱臼は手術が必要になります。


実際の症例1

犬種:シェットランドシープドッグ(♀)

年齢:1歳齢

体重:12kg

名前:ラッシーちゃん(仮名)

主訴:交通事故にあってから立てなくなった(紹介)

黄色矢印のように左腸骨骨折および恥骨骨折を認めました。翌日に骨折整復のための手術を行いました。

腸骨骨折部は粉砕していたため、2枚のプレートとピンを用いて、整復を行いました。

また、恥骨骨折は静置しました。

ラッシーちゃんは術後翌日から立てるようになり、2週間後には通常の歩様に戻りました。

年齢も若いため、治癒が早く、術後1ヶ月で安静を解除しました。


実際の症例2

犬種:トイプードル(♀)

年齢:7歳齢

体重:3kg

名前:プーちゃん(仮名)

主訴:高所から落下し、歩けない

左腸骨の寛骨臼の頭側に骨折(蝶形骨折)を認めました。また、恥骨骨折も認められました。後日、骨折整復手術を実施しました。

2枚のプレートを用いて、腸骨骨折部の整復を行いました。一部遊離している骨片はそのまま静置しました。

プーちゃんは術後2日目から徐々に歩けるようになり、術後1ヶ月で通常の歩行が可能になりました。

術後2ヶ月で骨癒合を確認したため、安静を解除し、治療を終了としました。


実際の症例3

犬種:mix(♀)

年齢:3歳齢

体重:8.6kg

名前:るるちゃん(仮名)

主訴:交通事故にあってしまい、歩けない

右腸骨の粉砕骨折と左恥骨の骨折を認めました。後日、腸骨骨折整復の手術を行いました。

症例2のプーちゃん同様に2枚のプレートを用いて腸骨骨折の整復を行いました。

るるちゃんは骨折部周囲の筋肉損傷が重度であったため、回復には時間がかかりましたが、術後2週間でゆっくりとした歩行が可能となりました。術後2ヶ月では後遺症も認められず、骨癒合が確認されたため、安静を解除しました。


実際の症例4

猫種:mix(♂)

年齢:3歳齢

体重:3.3kg

名前:カイちゃん(仮名)

主訴:外に出て行ってから、うまく歩けない状態で見つかった(恐らく交通事故)

右の仙腸関節の脱臼と恥骨の骨折を認めました。後日、仙腸関節の整復術を実施しました。

右腸骨と仙骨にスクリューを挿入し、関節を固定しました。

カイちゃんは術後翌日から歩けるようになり、術後1ヶ月で安静を解除しました。

まとめ

骨盤の骨折は、強いエネルギー外傷(交通事故・高所からの落下)によって引き起こされるため、複雑な骨折が引き起こされやすいです。また、内臓損傷や神経損傷を同時に併発することも多く、状態によっては内科治療を優先する必要があります。

また、骨折している箇所や変位の程度によって治療が全く異なります。

腸骨の不全骨折(変位がない骨折)や恥骨・坐骨のみの骨折の場合は、基本的には手術は不要で、1〜2ヶ月程度の安静管理で十分な機能回復が見られることが多いです。

変位がみられる腸骨骨折や仙腸関節脱臼、寛骨臼骨折は手術が必要です。手術を行わない場合は、合併症として骨盤腔狭窄による排便障害(重度の便秘)や歩行障害が起こりやすいです。

また、骨盤周囲には重要な神経・血管が多く存在します。受傷後10日以上経過する場合は、骨折部周囲の組織がこれらの神経・血管と癒着していることがあり、手術による合併症も多くなる傾向にあります。そのため、受傷後早期の治療介入が重要となります。

獣医師からのメッセージ

骨盤骨折における治療のポイントは、骨折の正しい評価と骨盤骨折以外の併発疾患の有無を確認することです。そのためには、胸腹部のレントゲン検査、血液検査、超音波検査といった全身精査が重要となります。

また、神経障害がみられる場合は、術後のリハビリテーションも重要となります。

獣医師:保田

 

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